まだまだまだ世界は広い/7ORDERデビューによせて

 

「昨日、初雪となった地域もありました。」「1都3県は緊急事態宣言により夜20時までの時短要請が出されました。」

 

1月13日。朝6時半。起きたばかりのボーッとした頭にどこか遠い国の話ようなニュースが流れてくる。

 

 

今日も仕事だから薄いベージュのアイシャドウ。まつげはビューラーであげたけど面倒だからマスカラはつけなくていいや。ロムアンドのリップを買ったのにどうせ毎日マスクだから数回しかつけていない。色の入ってない顔はどこか物足りない。急いで前髪を巻いた。後ろ髪をアイロンする時間はないからひとつに結んだ。家を出るまであと5分。今日は寒いって言ってたからダウンジャケットを持っていこう。

 

 

車のエンジンをかけた。フロントガラスがまだ凍っている。

 

 

音楽をかけよう。

わたしの大好きな7ORDERの音楽をかけよう。

 

 

今日は7ORDERのデビュー日。

初の武道館ライブの日だ。

 

おめでとう。心が踊って仕事が手につかないくらいウキウキしているはずなのにわたしは武道館に行けない。行かない。

 

コロナがなかったら...あと1年早かったら...頭の中で何度も何度も「たられば」を考えた。萩ちゃんが世界でいちばん大切だった大学生のわたしはもういなかった。授業を抜け出してまで行ったzeppも、バイトを休んで行った少クラ収録も、過去の想い出。世界が変われば人も変わる。わたしも「オトナ」になったみたい。渋谷に大きな看板が出ようとも、7人の顔がラッピングされたトラックが大音量で街を走ろうとも、どこか遠い世界のお話だった。広告は誰かの合成でトラックだって嘘みたい、と思った。何度も行ったはず「トーキョー」が映画の中の世界みたいだった。

 

武道館だって悩んだら苦しいから「仕事上感染するわけにはいかないし」「今は我慢だよね」「生きてればまたいつか会えるでしょ」「もっと大変な思いをしている人もいるんだ」「仕方ない仕方ない」何度も何度も何度も何度も頭の中で繰り返した。まるで自分を言い聞かせるみたいに何度も何度も。

 

 

 

誰も悪くない。

 

 

 

わたしの何倍も悔しいのは苦しいのは悩んだのは7ORDER本人だ。7ORDERはこんな状況なのに「やる」を選択した。中止や延期や無観客の案だって出ただろう。本人もスタッフさんも夜も眠れないくらい悩んだだろう。でも、こんな状況だからこそ「やる」ことにした。大きすぎるリスクを背負って。

 

 

すごく上から目線な発言かもしれないけど武道館に行くことにしたファンの方は何も気にしないで楽しんできてほしい。感染症対策は大事だけど行けない人のことなんて考えなくていいからコソコソしなくていい。申し訳なさなんて感じなくていい。わたしは行った方から「楽しかった」「最高だった」とレポが回ってくるのを心から楽しみにしている。

 

 

でもね、ここだけの秘密だけどふと気を抜くと「あ〜行きたかったな」と心の声と一緒に涙が出てきちゃう。キラキラのラメが入ったアイシャドウをつけて武道館行きたかったな。気持ちの折り合いなんてつけられないよ。

 

 

この暗くて長い夜が明けたらまた大きな歓声を7人に届けられますように。7ORDERが武道館をやること、彼らを支え続けてくれるスタッフさんがいること、武道館に行って直接応援するファンがいること、武道館には行けないけどどこかで応援するファンがいること。誰の、どの選択もきっと間違ってはいない。

どうか、どうか初の武道館ライブが成功しますように。今日が7人にとって最高の一日になりますように。

 

 

 

 

 

 

 

フロントガラスの氷が溶けた。仕事に行こう。帰りはケーキでも買って帰ろう。今日は華々しいデビューの日だ。車からは「GIRL」が流れてきた。

 

 

叶えていこう
まだまだまだ 世界は広い

 

キミが描いたあの世界は
今もそこで輝いているさ

 

 

デビューおめでとう。